ホールズクリーク → アリススプリングス 1152km
5/1 ホールズクリーク 〜 ウルフクリーク 160km
よせばいいのに、結局タナミハイウエイに入ってしまった。アリススプリングスまで、1000kmほど未舗装路が続くのだ。
アリススプリングスまで町は無いので、ホールズクリークのスーパーで食料を買い込んでから出発。
工事中という、エンジンをこするくらいの砂の深いところを通った。そこでは横井さんの250ccだと、歩くくらいまでスピードが落ちてしまう。
今日は途中でハイウエイを離れ、水があるクリークを慎重に渡り、隕石が落ちて出来たクレーターがある国立公園内のテントサイトに泊まる。クレーターは直径800メートルで、深さは50メートルほど。草が生えているところを除けば、写真で見る月のクレーターといっしょだ。
入り口に店があり一応のものは手に入るが、店と言うよりたまたまここにある農家が、自分たちも使うものを売っているという感じだ。ガソリンはリッター1ドル50で、ドラム缶から手動ポンプで補給する。
明日は夜明けとともに行動を開始したい。次のラビットフラットまでが、このハイウエイの核心部で、そこを過ぎれば楽になると言う情報だ。
5/2 ウルフクリーク 〜 ラビットフラット 342km
朝6時過ぎに起きて、8時に出発できた。
あまりにも砂埃がひどいので、横井さんとは1km以上は離れて走ることにした。
昨日通ったクリークを渡り、再びタナミハイウエイに出る。コルゲーションと呼ばれる洗濯板のような道と、深い砂と、石混じりの砂と、コンクリートのように固くて平らなところが、交互に現れる。深い砂もスロットルを戻さなければ、トランザルプのパワーと重さで突っ切れるが、砂が深いところは突然現れるので気が抜けない。その他、渡河もあった。
牛が逃げないようにするグリッドを渡り、ゲートを開閉しながら進む。こちらでは良くあることだが、このあたりの牧場にもフェンスが無く、ハイウエイのところどころに牛が歩いている。バイクで近づくと逃げるのだが、すぐ近くに行くまでのんびりしているので困る。その上、横に逃げればいいのに、俺が行く方向に逃げるのでさらに困る。
途中で会ったアボリジニたちは、都市に居る人達とは違い太っていないので、とても精悍に見えた。
こんな悪路も、州境を越えて西オーストラリア州からノーザンテリトリーに入ると、道幅も広くしっかりと整備された未舗装路になった。100kmは出せるほどだ。付近にタナミ鉱山がありトレーラーも通るので、ちゃんと整備されるのかも知れない。タナミ鉱山は、金鉱山のようだ。
ラビットフラットのロードハウスは、今日はお休み。隔日営業なのだ。ゲートがロックされていたが、たまたま近くにいたアボリジニの兄ちゃんが迂回路を教えてくれて、中に入ってキャンプ。明日営業を開始したら、ガソリンを補給しよう。それにしても、あたりには何も無いしクルマも無いのに、どうやって彼はここまで来れたのか、毎度の事ながら不思議だ。
今日も蚊が多い。砂漠地帯とは言え、フィッツロイクロッシングあたりからは花も多く、ススキも生えている。クリークに水も有ったことから、雨季が終わったばかりなのだろう。
5/3 ラビットフラット 〜 Yuendumu南40km 350km
朝7時頃にテントから出ると、店は営業をしているし、客も集まっている。「絶対定時からしか仕事をしないオーストラリアにしては、なんて働き者なんだろう」と、横井さんと話しをしていたのだが、昨日州境を越えたので、時計を2時間進めなければならないことに気づき、ふたりで爆笑した。
Yuendumuで給油したら、そこの兄ちゃんは片言の日本語をしゃべれた。いきなり「こんにちは」と挨拶して、お金を払うと「ありがとうございます」と言ってくれた
横井さんのキャリアを途中のレストエリアで修理していた時、助手席にケバいアネキを乗せた、3両連結のトレーラーが入ってきた。ラジエータを点検していたおっさんに聞くと、18段ミッションで燃料タンクには600リットルは入るそうだ。
7時だと思っていたら9時だったので出発が遅れた上に、振動が激しいためだろうか、途中で横井さんのバイクのキャリアは折れるし、俺のバイクのカウルの一部がひび割れるしで時間を喰い、今夜はYuendumuから40kmほど行ったところのブッシュの中で野宿となってしまった。あと60kmも行けば、最近出来たらしいロードハウスがあるのになぁ。そうすりゃ、冷たいものが飲めるのに。カウルは針金で固定して、なんとかした。
しかし、ブッシュキャンプもなかなかいいものだ。おそらく周囲数十キロには、他の人間はいないだろう。ものすごく静かで、星がきれいだ。ただ、ひとりではさびしすぎるから、その時はやりたくは無い。夜中に物音がしたので恐る恐る外を見ると、テントを取り囲むようにして牛が草を食べていた。暑いから牛も夜行性なのか、まったく人騒がせな。
明日はアリススプリングスに着けるだろう。バイクの様子を見ると、これ以上のダート走行はかなり手入れをしないと無理そうだ。ま、そんなに走りたいわけでは無いけれど。
日本のゴールデンウイークは、どんなもんなんだろ。
5/4 Yuendumu付近 〜 アリススプリングス 300km
やっとタナミは終わり、アリススプリングスの100kmほど手前で久しぶりに舗装路に出た。舗装路って、なんて走りやすいんだろう。今までと比べると、ほとんど気を使うことなく走れる。あまりのうれしさに、舗装路が始まったところで記念写真を撮ったほどだ。
なかなか楽しい道だったが、砂よりも、石よりも、振動が一番手ごわいとは思っていなかった。
途中にあったロードハウスは、噂どおり出来たてだった。ナッパビィクリークと読むのだろうか、小説にもなった、遭難して多数の死者を出した内陸部探検隊のデポー(補給基地)があった近くらしい。ここで見たアボリジニのオッサンは、刺繍の入ったロングブーツにテンガロンハットといういでたちで、スリムな体型とあいまってすごくカッコ良かった。なんで彼らはあんなに足が長いんだろう。西洋人が短足に見えるくらいだ。
アリススプリングスは真っ平なところかと思っていたが、周囲を低い山が囲んでいて盆地のようなところだ。良く考えてみれば、真っ平らなところに水は出にくく、「スプリング」という地名が付くわけはない。ちなみに「アリス」は、ここの泉を発見した人の奥さんの名前だそうだ。
ここのキャラバンパークには、矢野君と、これまたパースのRBPでいっしょだった新婚夫婦がいた。
盆地だけあって、昼間は暑いが夜はかなり冷え込む。だいぶ着込んで寝袋にカバーを付けても、寒さで目を覚ますほどだ。ま。蚊がいなくていいのだが。
5/5 アリススプリングス連泊
寒さで目が覚めた。
横井さんは1泊2日でエアーズロックを見に行ったが、俺はもう見たからいいや。
今日は朝からバイクの整備。1000kmのダート走行でバイクに付着した、酸化した鉄分を多く含むピンク色の砂を洗い流す。まるで小麦粉のように細かい砂だ。チェーンにこびりついた砂を落としている時、オーリングチェンではないことに気づいた。伸びるはずだ、気を使って損をした。おかげでWD-40と予備のオイルを使い果たしてしまった。
昼食と夕飯は、隣にテントを張っている、バイクで世界1周中のカップルのジミーとアナにご馳走してもらった。夜、寒いなか飲んだ甘いミルクティーがおいしかった。俺も砂糖を買おう。アナは妊娠しているぞ。
シャワーを30分も浴びつづけて、やっとからだが温まった。
5/6 アリススプリングス連泊
今日はNorthern Territoryだけの休日のため、商店は全て営業していない。
ここアリススプリングスは行政上、Northern Territoryにある。ノーザンテリトリィとは、北部準州、北方領土って意味だろうか。つまりここは、州では無いのだ。先住民であるアボリジニに気を使ってリうのだろうか。彼らも、北米や北海道の先住民と同じ運命をたどっている。
エアーズロックへ行き、今日帰ってくるはずの横井さんが帰ってこない。どうしたんだろう。
5/7 アリススプリングス連泊
昨日帰ってくる予定の横井さんが、1日遅れで帰ってきた。あと30kmというところでカメラを落としたことに気づき探しに戻ったが、結局見つからずに夜になってしまい、ここから130kmほどのところでブッシュキャンプしたそうだ。
休日が明け郵便局へ局留めの郵便を取りに行ったのだが、見つからなかった。パースのRBPから届いているはずだが。それにしても、姓と名のどちらで探せばいいのか。
夕方になり、みんなでBBQをして、腹いっぱいになった。
砂糖を買ったので、甘いコーヒーを飲めた。
明日は出発しよう。
5/8〜5/9 今日もアリススプリングス
なぜか今日もアリス。
パースのチョーさんから手紙と写真が届いていた。
あいかわらず昼間は暑いのに、明け方は冷え込む。これが大陸の気候なんだろうか。
明日こそ出発だぁ。